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ひららかのブログ

退職

 今月某日をもって退職する。この期日については、経歴に休職期間が含まれないよう人事部が取り計らってくれた。私の体調を気遣うことばを最後に、通話は終了した。ほんとうによい会社だと思う。

 郵送する退職願は書き上がったが、添え状を作成する気は起こらない。非常識にも突如として去りゆくものが、常識的書式にならってシュレッダーの作業を増やしたところで、なんになろう。他人の心情の機微を読みとれない私が社会的地位の相対的に高い人々からかわいがられたのは、ひとつには、少なくとも形式に対しては従順であったからだ。しかし、いまとなっては、どれほどうやうやしい挨拶も、行為と矛盾する。恥ずかしさで息がつまりそうなほどしらじらしくて、謝罪と礼を述べる手紙など同封できそうもない。

 入社後半年あまりで組織をぬけだす私がもたらしたものは、莫大な教育コスト、煩雑な事務手続き、期待と同量の失望、といったところだろう。さりとて、利己的な性分ゆえ、刑期満了前に出獄の日を迎えた感慨で胸を満たすばかりである。これまでに、仕事を楽しむことはおろか、仕事をこなして余力を残すことさえなかった。会社員としての、規則正しい反復からなる生活は、永劫のシャトルランに似ていた。はやばやと打ち切る。