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パルタイ

 そらで言えそうなくらい「パルタイ」を読んだというのに、本作を取り上げるつもりの卒業論文ははかどらず、おまけに、倉橋由美子を愛しているのか憎んでいるのか、ますますわからなくなります。倉橋のことばに私は断片的に強く共鳴しますが、そこにはむつみあうことの安堵あるいは快楽のかけらもありません。

 「パルタイ」を私は悪夢のような喜劇として読みます。倉橋が私に突きつけるのは、私が人間の、それも女性の体臭をもっているという冗談みたいな事実です。私には妊娠および出産する能力が備わっており、それにともなう周期的な心身の不調をも引き受けねばならないこと、それらが過剰なものとしか感じられないこと、しかしこういった感想を口にすれば脊髄反射めいた糾弾のつぶてを打たれかねないこと、もここには含まれます。

 ことばにそそぎこむ偏執的なまなざしと、破れやすい皮膚とをもって、私は卒業論文を書き上げるでしょう。「人間的」なるものや「ふつうのいい人」への軽蔑と、わが身への嫌悪とを分泌し、問いに問いを重ねてどこにもない場所へと落ちこみ、はじめて読んだ日と同じ吐き気に耐えながら、倉橋由美子のことばを飲みくだそうとつとめるでしょう。そうして提出した論文が取り戻された瞬間に、焼却することを決心するでしょう。