ひらログ

ひららかのブログ

暮れの記

 なにもない一年でした。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのためだけに、ひとり夏の雪国をめざしたのは昨年のことです。通学定期をはじめて手にしたのは一昨年です。今年はめずらしくどこにも行かないで、同じ改札や街並みを飽かず眺めました。変わらない景色に向かうまなざしのほうが変わってゆくのを、たとえば同じ顔から目が離せなくなってゆくのを、楽しんでいます。

 今年は、ことばにしがたいことを、なんとかことばにしようと努めました。それまで、迷いや恥、ほんとうの望みといったものを、ひらいてみせたことはありませんでした。大勢からはみ出したところに立っているということも書き、話しました。抱えてきた重たいかたまりは、なにごともなく読まれ、うなずかれて、ゆるやかにとけつつあります。そうして私は、私のために生きる私をすっかり許しました。きれいな人にはきれいだと言います。子どもはなくて、大人ひとりと猫と暮らしたいというのを、すまなく思うことはもうありません。

 なにもない一年でした。おおむね規則正しいくりかえしです。おだやかに流れ、たしかな感触と痕跡を内側に残してゆく、生涯でもっともいとしい日々の蓄積でした。望むかぎりそれはつづいてゆくのです。